読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

なまけのおつむ

きちんと暮らして死んでいく

ヤン・シュヴァンクマイエル

ヤン・シュヴァンクマイエル作品を幾つか観た。

「アリス」

f:id:aokidanchi:20170228225009j:image

だれもが知っている「不思議の国のアリス」を、シュヴァンクマイエル風味に仕上げた長編映画。
生身の人間(少女)と人形をくみあわせた映像がたまらなく美しい。
冒頭の川に小石を投げ続けて終いには姉(母?)に殴られるアリス、噛んだら歯が折れてしまいそうなくらい固そうなビスケット、それぞれのシーンが愛おしい。
アリスの感情の無さと怖いもの知らずさが静かに面白い。

「ジャバウォッキー」

f:id:aokidanchi:20170228225546j:image

なんのストーリーもなく、子ども部屋でおもちゃたちが動き回るのをカメラに収めただけの短編映画。なのにこんなに愉快なのは何故だろう。
人形を茹でて食べたり、折りたたみナイフが血を流したり、黒猫が鳥籠のなかにとじこめられたりと痛快。と同時に、癒される。
今のところいちばん好きです。DVDも買ってしまいましたし。

男のゲーム

f:id:aokidanchi:20170228230139j:image

これは最高。自宅のテレビでサッカーゲームを鑑賞する男と、そのサッカーゲームの独特な試合の模様、そしてなぜかそのふたつが絡まっていく。
サッカーゲームとは名ばかりで、得点するにはいかに多く相手チームの人間を殺すかだそう。そのやっつけ方が、画像のように相手の口のなかに汽車を走らせたり、鼻に蛇口を取り付けて絞り出してしまったりと、わたしはグロが苦手なのだが粘土細工の人間のせいかこれは本当に気持ちがよく、スッキリする。精神的マスターベーションシネマと言える気がする(絶対に怒られる)。
穏やかでない映像と裏腹に、のどかな、のどかすぎる音楽が流れ続けているのも好もしかった。

FOOD

f:id:aokidanchi:20170228230709j:image

こちらはFOODつまり「食事」をテーマにした短編。Breakfast、Lunch、Dinnerの3部に分かれています。
個人的に最も好きだったのはLunch。どこまで食べ尽くしてしまうのか?!に時間の経つのを忘れて見入ってしまった。
食べることについて考えさせられる。よくも悪くも。



シュヴァンクマイエルの作品たちを観て感じたのは、
①自由であり無駄である
②快感を得られる
③死や危険を恐れないこと
の3つだった。

①は、とくにジャバウォッキーやアリスで強く感じた。アリスは恐らく未就学児で、さしたる義務もなく毎日を遊んで過ごせている。時間を気にすることなくうさぎを追っかけていられる。うさぎはうさぎで「女王様に叱られる!」と時計を度々見てはいるものの、あまり急いでいるようには見受けられない。合間に赤ちゃんの世話をしたりなんかしている。「なにをしてもいい」「なんの(とくに時間の)制限がない」のは、かなり魅力的でもあり、またすこし恐ろしくもある。
そして無駄。
ジャバウォッキーなんてほとんどのシーンが無駄だ。人形の着せ替えは永遠に続くし。一見した無駄さを前面に押し出し、映画にしたという事実に勇気を貰った。

②は、食べ、傷つけ、殺すこと。粘土細工を使っているせいか、本当に快感なのだ。心を孫の手で引っ掻き回されている気持ちになる。食べ、傷つけ、殺すって、実は同じことなのかも。

③。アリスはなにも恐れない。ひるむことも、怯えることもせず、ただ好奇心のおもむくままに行動する。ジャバウォッキーに出てくるセーラー服は、帽子のなかにワームがたくさんいてもまったく気にしない。男のゲームに至っては、死というものがとてつもなく軽く、羽根のように軽く描かれている。肉体の死は死ではないのかもしれない。そんなことを考えた。

今日ジャバウォッキーがうちに届く予定だ。一緒に観てくれる人もペットもうちにはいないけれど、もうすぐタフィがくる。